小説 新型EDFC
第六話 【完成目前】
![モックアップ](img/image_06.jpg)
「杉山、できたぞ。」
そう言って中野が持って来たコントローラのモックアップは、
杉山の期待をはるかに超えるコンパクトサイズだった。
「中野、全部入ったの?コレに?」
「操作系も、コントローラも、Gセンサーも?」
杉山は現物を前にしても半信半疑だった。
「まぁ、あんだけ高い焼肉を腹いっぱいご馳走になったからな。」
「そりゃオレだって頑張るさ。」
「あとはお前の言っていたシンプルな操作と、見やすくて大きなディスプレイ。」
「表示させる項目も増えたから、結構苦労したんだぞ。」
中野はそう言いつつも、完全にドヤ顔になっていた。
「スゲー!いい、いいよコレ!」
「これだったら三原も納得するよ!」
杉山は三原が早く営業から戻らないか、イソイソしていた。
そこにちょうど三原が戻ってきた。
「見ろ!三原!これなら文句ないだろ!」
杉山はまるで自分が作ったかのように自慢した。
「おおーっ!いいじゃん、いいじゃん!」
「これは売れるよ、中野!お前スゲーな!」
三原は誰の苦労かよくわかっていた。
「で、肝心のコストはどうなんだ…?」
恐る恐る杉山が中野に問い、三原も中野の顔を覗き込んだ。
「実はな…。ギリだ!」
中野がサムアップすると、
「おおーっ!」と二人揃って思わず声を上げた。
三原は言った。
「いやー、あの時杉山のダンボールの工作を見て、厳しいことを言っておいて正解だったよ。」
杉山も、
「それを言ったらオレだって、中野にあれだけ高い焼肉食わせて大正解だったよ!」
と笑った。
「でも、まぁ、二人のお客様を思う強い気持ちのおかげで、いいのができそうだ。」
中野がそう言うと、
「さぁ、完成まであと一歩。試乗会でのメディア発表まであと半月を切った。」
「ここからが最後の勝負だ。」
「手にした人全員がコレはいいよと言ってくれるよう、量産に向けて頑張ろう!」
そうして杉山から最後の檄が飛んだ。