小説 新型EDFC
第八話 【東京オートサロン2013】
メディア試乗会を無事終えた杉山、三原、中野の3人は、さらに忙しさを増していた。
そう、次なる恒例行事は新年早々に幕張メッセで開催される、東京オートサロンへの出展だ。
毎年オートサロン前は1年で最も忙しい時期となるが、今回はEDFC ACTIVEを多くの人に見てもらうべく色々なアイデアを検討し、
例年よりもドタバタとしていた。
「オートサロンでEDFC ACTIVEをお客様に発表するわけだけど・・・」
「車に乗らずにEDFC ACTIVEの面白さを伝えるのは不可能だよな・・・」
杉山はボンヤリと宙を眺めながらつぶやいていた。
「馴染みのショップの人達もいっぱい来るからな・・・」
「ワイヤレスになったことを前面にPRしたいよな・・・」
三原は難しい顔で腕組みをしながらつぶやいた。
「幕張メッセのホール内だと、GPSを受信できないぞ・・・」
「なんとかGとスピードの統合制御を見せたいな・・・」
中野はGPSアンテナを見つめながらつぶやいた。
「う~ん・・・」
3人はしばし頭を抱えながらオートサロンでどう展示するかを、
ホワイトボードに書いては消して、消しては書いてを繰り返していた。
「よし!まず実際に見て、触ってもらうことが一番重要だ!」
「展示デモ機を大量に準備しよう!」
「デモ機を展示するだけじゃ良さは伝わらないし、
GPSが受信できないからスピードの制御が見せられない。」
「間に合うかどうかギリギリだけど、プロモーションビデオを作ろう!」
「あとは1時間に1回、直接オレ達がマイクを持ってデモンストレーションをやろう!」
「これだけ多機能になったEDFC ACTIVEの主要な機能をわかりやすく説明するんだ!」
3人は次々とアイデアを固めていった。
「でも時間が無いぞ。あと1ヵ月半でこれだけ準備できるのか・・・?」
杉山が不安げに言うと、
「大丈夫。ウチの連中はみんなドMだから!厳しい方が余計に燃えるんだ!(笑)」
三原が笑いながら言った。
そして・・・。
ピンポンパンポン・・・ 出展者の皆様。ただ今、東京オートサロン2013が開場いたしました。 3日間、よろしくお願い致します。
幕張メッセのアナウンスが会場内に流れたと同時に、 もの凄い人数のお客様がブースに流れ込んで来た。 それと同時に杉山、三原、中野も、お客様からのEDFC ACTIVEの問い合わせに追われた。
「へー!これスゴイね!いよいよサスペンションもここまできたんだ!」
「これ、昔のF1のアクティブサスペンションみたいだね。」
「オレ、コレ、雑誌の記事読んでからスゲー欲しいんですよ!」
「これは面白そうだ。テインさん、いいの作ったね。」
お客様の口からは、次々と期待と称賛の声が溢れかえった。
杉山、三原、中野をはじめテインブースのスタッフ全員が、
東京オートサロンに来て頂いたお客様の声を直接聞いたことで、
期待以上の手応えをつかむことができた。
TEIN
"TE"chnical "IN"novation = 技術革新
から生まれたこの社名。
常に最新の技術で最高の製品を創るという創業当時からの変わらぬ情熱を受け継いだ3人が、 新世代サスペンションを世に送り出すまでの、実話に基づいた物語。
3人の挑戦は今まさにスタートの撃鉄が落ち、号砲が鳴らされたばかりである。