小説 新型EDFC
第一話 【お客様の声】
とあるの日の午後。
営業担当の三原はショップのピットにいた。
今日は新製品の案内でお得意様のショップの店長を訪れたのだが、店長はたまたまお客様の車に、テインの車高調とEDFCを装着している最中だった。
三原は邪魔をしないように店長の作業を眺めていると、店長はエンジンルームに顔を突っ込みながら独り言のようにつぶやいた。
「三原君さ、このEDFCって付ければ便利だけど、付けるのに配線がめんどくさいよな~。」
「この配線作業が無くなれば、工賃だってもう少し安くしてあげられるのに…。」
三原は「すみません、店長…」と言ったところでハっとして、新製品の案内もロクにせずに、急いで会社に戻った。 急いで戻った先は、商品企画にいる同期の杉山だった。
「なぁ、EDFCのモーターって、ワイヤレスで動かせないかな。」
「なんだよ、急に戻ってきたと思ったら、やぶからぼうに…。」
「だってお前、EDFCのモーター配線て、めんどくさいと思ったことない?」
「そりゃ、あるけどさ…。」
「だろ?もしあそこをワイヤレスにできれば、装着の手間がグッと減るんだ。」
「それはショップの作業がラクになるだけじゃなく、お客さんの工賃が安くなることにもつながる。」
「そうか…。それ、案外面白いかもな。」
「よし、今度の企画会議に出してみるよ。」
ちょうど次期EDFCの企画担当に抜擢され、思案を重ねていた杉山には、三原の要望はまさに渡りに船だった。
「モーターのワイヤレス化。よし、次のEDFCはこれで行けるぞ!」
今度の企画会議まで時間が迫る中、杉山は急いで企画書をまとめた。