だからテインは二筒流

複筒式のショックアブソーバと単筒式のショックアブソーバ。
本当はどっちが性能いいの?
世の中どちらが高性能だの色々なウワサがありますが、
サスペンション専門メーカーのテインが、
そんなウワサにズバッとお答えいたします!

単筒式と複筒式の構造の違い

よく雑誌などでも目にする、ショックアブソーバの単筒式と複筒式。
『何となく構造が違うというのはわかるんだけど、どこが違うの?』という方にご説明します。

図版1

単筒式と複筒式の違いは図を見てもらうとわかるとおり、ショックアブソーバに使われている筒の数が違うのです。

  • 単筒式はショックアブソーバのシェルケースの内側がそのままシリンダーとなっており、1本の筒の中にオイルやガス、ピストンバルブなどが入っているタイプの物です。
  • 複筒式はシェルケースの中にもう1本シリンダーが入っていて、そのシリンダーの中をピストンバルブが上下するタイプの物です。

その他の構造の違いは、単筒式はフリーピストンを境にオイル室とガス室が完全にわかれています。
複筒式はシェルケースの中のオイル室とガス室に区切りはありません。
というように、単筒式と複筒式はショックアブソーバの筒の数の違いにより、内部の構造もそれぞれ異なっているのです。

単筒式のメリット/デメリット

それでは、単筒式ショックアブソーバはどんなメリット、デメリットがあるか見てみましょう。

メリット
  • オイル容量を多くすることができるため、熱容量に余裕があり、安定した減衰力を長時間発生することができる
  • ピストンバルブサイズを大きくすることができるため、ピストンバルブの受圧面積が大きくなり、微細な減衰力セッティングを正確に行うことができる
  • 構造的にショックアブソーバの車体への取付角度に制限がない
  • 内部のオイルが高温となった場合の放熱性が良い
  • オイルとガスが混ざらないため、エアレーションがおきない
デメリット
  • オイル室とガス室が分割されて直列に配置されるため、十分なストロークが確保しずらい
  • 構造的に高圧ガスを封入するため、ゴツゴツとした乗り心地となる傾向にある
  • 高圧ガスが封入されているため、シールなどの緊縛力が上がり、フリクションが大きくなる傾向にある
  • 倒立式は正立式に比べストローク時の摺動部が多いため、フリクションが大きくなる傾向にある
  • 石跳ねなどでケースがへこむと、内側のシリンダーも直接影響を受けてしまう
単筒式クリアモデル

複筒式のメリット/デメリット

それでは、複筒式ショックアブソーバはどんなメリット、デメリットがあるか見てみましょう。

メリット
  • オイル室とガス室が分割された直列配置じゃないため、ストロークが確保しやすい
  • ベースバルブにより封入ガス圧を低くできるため、乗り心地に優れる傾向にある
  • 封入ガス圧が低いため、シール緊縛力等のフリクションが抑えられる
  • 倒立式に比べ、フリクションを抑えられる
  • シェルケースが若干へこんでも、ショックアブソーバの機能に影響がない
  • 製造時の加工性に優れ、製品コストを抑えることができる
デメリット
  • 構造上、単筒式ほどオイル容量をかせぐことが困難
  • 構造上、単筒式ほどピストンバルブサイズが大きくできない
  • 構造的にショックアブソーバの車体への取付角度に制限がある
  • オイル室とガス室に区切りが無いため、エアレーションを起こすことがある
複筒式クリアモデル

単筒式と複筒式を比べてみよう!

単筒式と複筒式のメリット、デメリットはおわかり頂けましたでしょうか
それでは次に単筒式と複筒式を直接比較してみましょう

その1 ストリート用ショックアブソーバの乗り心地

一部のメーカーでは、単筒式ショックアブソーバの方が性能的に優れていると言われていますが、はたして本当にそうでしょうか?
先ほどの単筒式のデメリットを思い出してみて下さい。

  • オイル室とガス室が分割されて直列に配置されるため、十分なストロークが確保しずらい
  • 構造的に高圧ガスを封入するため、ゴツゴツとした乗り心地となる傾向にある
  • 高圧ガスが封入されているため、シールなどの緊縛力が上がり、フリクションが大きくなる傾向にある
  • 倒立式は正立式に比べストローク時の摺動部が多いため、フリクションが大きくなる傾向にある
  • 石跳ねなどでケースがへこむと、内側のシリンダーも直接影響を受けてしまう

近年のストリート用ショックアブソーバにおいては、何よりも乗り心地が重要な性能になってきました。
ストリート用ショックアブソーバにおいて乗り心地を確保するためには、セッティングの次に何よりも十分なストロークが重要です。
単筒式はオイル室とガス室が分割され直列に配するため、同じ長さの複筒式ショックアブソーバと比較すると、ストロークが確保しにくいことがわかります。

図版2

路面がフラットなサーキットを走るレース用ショックアブソーバであれば、ストリート用ほどのストロークは必要ありませんが、街中はサーキットと違いデコボコの路面や様々な段差があります。
それを乗り越えて走るストリート用ショックアブソーバでストロークが確保できないというのは、即突き上げなどの乗り心地の悪化に直結してしまいます。

単筒式と複筒式を比べてみよう!

その2 単筒式の高圧ガスって?

またストローク量の問題と同時に、高圧ガス封入によるゴツゴツ感やフリクション増大も、 乗り心地を悪化させる重大な原因となります。
以前、とあるメーカーの単筒式ショックアブソーバーには、フリーピストンの上にベースバルブを設けて封入ガス圧を下げる構造もありましたが、これはさらにストロークを犠牲にする結果となり、ストリートでの乗り心地改善には逆効果となる場合もあります。

図版3

【参考】 なぜ単筒式は高圧ガスの封入が必要なのか

複筒式は縮み側の減衰力をピストンバルブとベースバルブで分担して発生しているため、 構造的に高圧ガスを封入する必要性がありません。
ただし単筒式は一般的に伸び側、縮み側ともピストンバルブのみで減衰力を発生させます。単筒式の場合、縮んできたピストンロッドの体積分、フリーピストンが移動することによりストロークします。
その際フリーピストンに圧力がかかっていなければ、フリーピストンは実に簡単に動いてしまい、 縮み側の減衰力を正確に発生できずにピストンロッドが縮みきってしまいます。
そのためフリーピストンの移動量をある程度規制するために、ガス室には高圧ガスを封入しなければなりません。ガス室に高圧ガスを封入すると、パスカルの法則でショック内部の全てにガスの圧力がかかります。そうするとオイルシールにも高い圧力がかかり、シールの緊縛力が増し、フリクションを増大させます。

図版4
ガス圧が低い場合
図版5
ガス圧が適切な場合
図版6

単筒式と複筒式を比べてみよう!

その3 ストリート用ショックアブソーバに向いているのは?

さらに、道路に何が落ちてても不思議じゃないのが一般道。
何かがショックアブソーバに当たり、シェルケースがへこんでしまった場合、シェルケースの内側がシリンダーとなっている単筒式の場合、ショックアブソーバがストロークしなくなってしまいます。
これらから考えると、はたして単筒式がストリート用ショックアブソーバに最適と言えるでしょうか。残念ながら答えはNOとなります。

複筒式アニメーション

ここで複筒式ショックアブソーバのメリットを思い出してみて下さい。

  • オイル室とガス室が分割された直列配置じゃないため、ストロークが確保しやすい
  • ベースバルブにより封入ガス圧を低くできるため、乗り心地に優れる傾向にある
  • 封入ガス圧が低いため、シール緊縛力等のフリクションが抑えられる
  • 倒立式に比べ、フリクションを抑えられる
  • シェルケースが若干へこんでも、ショックアブソーバの機能に影響がない

複筒式であれば、これらストリート用ショックアブソーバの問題は全て解決することができます。
さらに単筒式に比べ製造時の加工性などに優れるため、コストを抑えることが可能です。ストリート用ショックアブソーバで非常に重要なハイクオリティ&リーズナブルプライス。
つまりストリート用ショックアブソーバとして最適なのは、むしろ複筒式の方なのです。

単筒式と複筒式を比べてみよう!

その4 サーキットでの単筒式

では次にサーキット用ショックアブソーバで比較してみましょう。ストリートではデメリットばかりが目立ってしまった単筒式も、サーキットではその実力をフルに発揮します。
ここでは単筒式のメリットを思い出してみて下さい。

単筒式アニメーション
  • オイル容量を多くすることができるため、熱容量に余裕があり、安定した減衰力を長時間発生することができる
  • ピストンバルブサイズを大きくすることができるため、ピストンバルブの受圧面積が大きくなり、微細な減衰力セッティングを正確に行うことができる
  • ストラットに曲げ剛性に強い倒立式を採用することができる
  • 内部のオイルが高温となった場合の放熱性が良い
  • オイルとガスが混ざらないため、エアレーションがおきにくい

サーキットでの走行は、ショックアブソーバにとっても非常に過酷な条件となります。
長時間ハードな走行を続ければショックアブソーバ自体も発熱しますし、隣には1000度近くまで温度が上昇するブレーキもあります。これらの熱の影響をショックアブソーバはもろに受けてしまします。そう考えるとサーキット用のショックアブソーバは、長時間ハードな走行を行っても、安定して性能を発揮できることが重要になってきます。 そうすると単筒式のメリットは、まさにハードなサーキット走行を行うには最適な性能となるのです。

またストリートでのデメリットとして挙げられたストロークの問題も、フラットな路面と高いバネレートにより、ストリートほどストローク量を必要としないため、サーキットではそれほど問題とはなりません。 これらから、単筒式はサーキット用ショックアブソーバとして最適と言えます。

ちなみに複筒式はと言うと…

  • 構造上、単筒式ほどオイル容量をかせぐことが困難
  • 構造上、単筒式ほどピストンバルブサイズが大きくできない
  • 構造的にショックアブソーバの車体への取付角度に制限がある
  • オイル室とガス室に区切りが無いため、エアレーションを起こすことがある

これらのデメリットから、ハードなサーキット走行に最適とは残念ながら言えません。

ただし複筒式がハードなサーキット走行に最適ではないというのも、あくまでも単筒式との相対比較しての話であり、事実2005年のニュルブルクリンク24時間レースでは、市販品のTYPE FLEXがクラス優勝を果たしています。
つまり耐久性などは単筒式も複筒式も大差は無く、差が出るのはプロのレーシングドライバーが感じ取れる、極めて限られた条件下での性能差なのです。

だからテインは二筒流

図版

いままで紹介してきましたように、単筒式、複筒式にはそれぞれメリット、デメリットがあり、それぞれの得意分野があるのです。

つまりどちらが優れているということではなく、用途に合った構造のショックアブソーバを供給することが重要なのです。
またテインは単筒式、複筒式において長年蓄積してきた膨大なノウハウがあるので、単筒式で欧州車のようなコンフォート性能を実現したり、複筒式でニュルブルクリンク24時間レースを勝ち抜いたりと、他のアフターパーツメーカーでは到底実現できない最高の品質、性能、技術を持っているのです。

テインはアフターパーツメーカーでも数少ない、単筒式と複筒式を製造しているメーカーです。これだけ多様化したニーズに対応するには、さまざまなセッティングのショックアブソーバが必要です。

お客様の要求される品質、性能、価格にマッチした製品を供給できるよう、テインはこれからも『二筒流』で応えます。

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